会社員の副業で不動産投資を始めようとしています。
不動産を買うときは、プライベートカンパニーを設立した方がおトクなの?
個人事業主と法人のメリット・デメリットは?
節税効果は?
年収いくらからなら法人を作った方が良い?
今回はそんな疑問にお答えします。
私も最近、副業で不動産投資を始めようとしていますが、節税目的で「プライベートカンパニー」の設立を考えました。
- 節税効果はどれくらいあるのか?
- 会社運営の手間を超えるメリットはあるか?
- 設立するタイミングはいつがいいのか?(最初から?一定の収益を上げてから?)
など、知らないことが多かったので、さまざまな本や教材を読みあさり、プライベートカンパニーのメリット・デメリットなどについて学びました。
結論、お得かどうかは「ケースバイケース」だということがわかりました。
学んだことをまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
【概要】プライベートカンパニーとは
プライベートカンパニーとは「個人の資産を保有するために設立する会社」のことです。
オーナーやその家族・配偶者など、少人数で会社が所有されます。
モノやサービスを売る一般的な会社とは違い、設立の主な目的は「節税」です。
例えば、不動産を会社として持つことで、以下のメリットがあります。
- 不動産収入には累進課税の所得税ではなく、税率の低い(ほぼ一律の)法人税が適用される
- 相続の際に、相続税が有利になる
- 経費処理できる範囲が、個人事業よりも大きい
- 役員に給料を払うことで所得分散できる
などなど、節税効果が大きいのです。
節税効果やメリット・デメリットについて、具体的には以下をご覧ください。
【7つのメリット】プライベートカンパニー(法人)設立の節税効果
次に、プライベートカンパニーを作る7つのメリットを紹介します。
メインは節税効果が高いことです。
①法人税率の方が所得税率に比べて税率が低いので節税になる
まず、利益にかかる税金の種類について。
個人事業主も法人も「利益(売上ー経費)」に対して課税されますが、課税される税金の種類や税率が違います。
所得が上がるにつれ税率も高くなる個人に対して、法人はほぼ一律の税率となっています。
つまり、法人はいくら売上が上がっても税率が同じなので、所得がある金額を超えた場合は、法人化した方が良いといわれています。
さらに今の時代、所得税は増税傾向にあるも、法人税は減税傾向です。
法人税を上げれば、日本の法人が海外に出ていってしまったり、海外からの投資を呼び込めなくなるおそれがあり、そういった背景から個人に厳しく法人に甘いのが実情。
そんなこともあり、法律的にも優遇された「法人」を設立する人が増えています。
所得税の税率[令和3年4月1日現在]
課税される所得金額 | 税率 | 所得から控除される額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
所得税の税率は最大で45%と高いですね。
これに住民税10%が加算されると、最大55%が課税されます。
法人税の税率[令和2年4月1日現在]
区分 | 税率(平成31年4月1日以降) | |
資本金1億円以下の中小法人など | 年800万円以下の部分 | 19% |
年800万円超の部分 | 23.20% | |
資本金1億円超の普通法人 | 23.20% |
所得税の最大45%に対し、法人税は最大23.2%と、約半分の税率です。
ということで、法人税の税率は所得税に比べて低いことから、利益に対して支払う税金を低くおさえることができます。
②「所得の分散」ができて節税になる
法人として役員へ給与を支払うことで、所得の分散が図れます。
所得の分散とは「収入を一人の個人に集中させないこと」です。
所得税は累進課税なので、給料が多ければ多いほど税率も高くなります。
よって、副業などの収入については、一人の個人に集中させないほうが、一家としての税金は安くなるのです。
妻や子供、親などに収入を分散させれば、税率をおさえることができ、その分だけ一家としての手取りは多くなります。
法人であれば、家族を役員にすることで、役員報酬を支払うことが可能。
役員報酬は一定のルール(毎月定額支給など)に従って支給すれば、法人の経費にすることができます。
副業を会社に知られたくない人は、妻を社長にすることで、副業にはならずに済みます。
③「給与所得控除」を活用できるので節税になる
役員報酬(給与)をもらった役員の収入は、「給与所得控除(一定額が経費とみなされて減税されるサラリーマン特有の制度)」の対象になるので、所得税の減税効果があります。
例えば、個人事業主と法人で、同じ400万円の不動産所得があったとして、以下の違いあり。
- 個人事業主・・「400万円」に対して所得税がかかる
- 法人・・400万円を役員報酬として支払えば、受け取った役員は「400万円ー154万円(給与所得控除)=246万円」に対して所得税がかかる
このように、個人であれば400万円全額に対して所得税がかかってきますが、法人で役員報酬としてしまえば、246万円に対してのみ所得税がかかるので、節税効果があります。
さらに400万円の役員報酬は経費処理も可能ですので、法人税も安くなり、ダブルの節税効果が生まれます。
このように、給与所得控除をうまく使うことで節税可能です。
④経費にできる範囲が広い
法人は個人と比べて、経費に計上できる範囲が格段に広いです。
経費にできる範囲が広いので、法人税が節税できます。
- 自宅の家賃(社宅扱いにする)
- 社長や役員の給料
- 社長や役員の退職金
- 生命保険料
- 共済の掛け金
なども経費にできます。
個人事業であれば退職金は経費にできませんし、共済も「事業所得に関わるもの」しか経費にできず、不動産所得の場合はできません。
この点、法人の方が有利ですね。
法人が加入できる「掛け金を経費にできるおすすめの共済」を2つ紹介します。
おすすめ共済①「小規模企業共済」
小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、中小企業の退職金制度です。
個人の不動産所得に関わる共済の掛け金は経費として計上できませんが、法人であれば全額経費処理可能なので、使わない手はありません。
掛け金は月7万円までOK、年間84万円が経費として計上でき、その分法人税の節税が可能です。
退職金や廃業時の必要資金として積み立て(貯金)できます。
さらに運用利回りも2%超えの超高利回りなので、お金の運用先としても優良です。(ちなみにメガバンクの普通預金の金利は0.001%)
「経費処理の節税効果+あとで全額返ってくる+利回り2%超えの優良運用先」である小規模企業共済を利用しない手はありません。
おすすめ共済②「経営セーフティ共済」
経営セーフティ共済は、取引先の倒産から中小企業を守る制度です。
こちらも退職金や大規模修繕費用の積み立て(貯金)として利用できます。
掛け金は月20万円、年間240万円まで経費として計上でき、その分法人税の節税が可能です。(積み立て限度額は800万円まで)
さらに前納制度を使えば、運用利回り3.25%という高利回りで運用できる、お金の運用先としても優良です。(ちなみにメガバンクの普通預金の金利は0.001%)
「経費処理の節税効果+あとで全額返ってくる+利回り3.25%超えの優良運用先」である経営セーフティ共済を利用しない手はありません。
⑤相続税の節税になる
相続資産を全てプライベートカンパニーに集めることで、その法人の所有権を子孫に継がせれば(子どもに出資させる)資産を簡単に移転できます。
不動産を法人で所有していれば、相続時には「不動産」ではなく「会社の株式」として相続することになります。
会社の株式であれば、個人で不動産を所有していた場合に比べて、相続資産の評価額を圧縮できる可能性あり。(法人の相続税評価額は、実際の価値よりも極端に低くなるカラクリあり)
評価額が低ければ、その分納める税金も低くなります。
また、不動産などの所有権は法人にあるので、相続時に所有権移転登記などの手続きも必要ありません。
①個人で所有・・所有する「不動産の評価額」に対して相続税がかかる
②法人で所有・・相続対象は「会社の株式」となり、「非上場株式としての評価額」に対して相続税がかかる(評価額は①より少ない場合が多い)
⑥損失が出ても9年繰り越せる
法人も個人も、不動産投資などの事業で損失(赤字)が出たら、損失を翌年以降に繰り越すことができます。
例えば、初年度は▲100万円の赤字、翌年度が200万円の黒字だったとすると、
- 初年度は赤字なので法人税は「0」
- 翌年度は▲100万円の赤字を繰り越すので「200万円ー100万円=100万円」となり、100万円に対して税金がかかります。(100万円✖︎税率の節税効果あり)
このように、赤字を繰り越すことができるため、支払う税金をおさえることができます。
損失の繰り越しができるのは、個人では3年ですが、法人では9年もできます。
⑦個人事業主に比べて「信用」がある
節税以外のメリットは、社会的に信用性があることです。
個人事業主は実績や経験などが見えにくく、あまり儲かっていないのでは?という印象を持たれることもあります。
法人であれば、個人に比べて信用度が高くなるので、取引についても比較的しやすくなるのではないかと思います。
【6つのデメリット】プライベートカンパニー(法人)設立は手間とコストがかかる
次にプライベートカンパニー(法人)を作ることでの(個人事業主と比較した)デメリットを紹介します。
主に手間やコストの面で不利です。
①設立の手続きや会計処理・税務申告に手間がかかる
個人事業主が開業する場合は、「個人事業の開業届出書」を管轄の税務署と地方自治体に提出するだけですが、法人を設立するには、さまざまな手続きが必要となり、手間がかかります。
また、法人の会計処理(決算)や税務申告についても、個人の場合と比較して圧倒的に複雑です。
個人であれば、クラウド会計ソフトなどを使って、楽に会計処理や確定申告ができるようになりましたが、法人の場合だとそうはいきません。
簿記の知識や税務知識など、かなり勉強する必要があります。
②税理士費用などがかかる
①の通り、よほどの経理のプロでない限り、会計処理や税務申告を税理士などに頼まざるをえません。
税理士に依頼した場合、30~50万円ほどかかるそうです。
③法人として登記をすると社長や役員の住所が公になる
法人化すると、会社として商業登記をすることになりますが、登記簿には社長の住所などが掲載されるので、身バレしたくない人にはおすすめできません。
④何もしなくても「最低7万円」の法人住民税を払う必要あり
法人の売上や利益がなくても、毎年最低7万円の税金(法人住民税)がかかります。
法人住民税は、所得に比例して税額が変わる「法人税割」と、資本金と従業員数によって税額が変わる「均等割」に分かれています。
利益が0であれば「法人税割」はかかりませんが、「均等割」で最低7万円の負担が生じます。
⑤会社の資産(お金)を好き勝手に使えなくなる
法人にすると、会社の資産を好き勝手に使うことはできなくなります。
会社の資産は、会社として保有しており、社長個人のものではなくなるからです。
個人事業主であれば、会社ほどの制約はないので、比較的自由に使えます。
⑥個人よりも「税務調査」が入りやすい
1年の決算が終わると、支払う税金の額を確定するために、税務署へ確定申告書を提出します。
税務署は確定申告書の内容や金額が正しいかどうかチェックしますが、個人と法人ではチェックする目が違うと思われます。
よほどの富裕層を除き、個人よりも法人に対してより厳しい目でチェックし、不審な点や疑問点があれば「税務調査」を実施するのが一般的。
税務調査は書面で行うものもありますが、基本的に税務署員が会社に訪問し調査するのです。
訪問調査では丸2日くらい拘束されるので、対応にとても手間がかかります。
申告内容に不備が見つかれば、申告書の修正が必要だったり、追徴課税されたりします。
【おすすめの会社形態】プライベートカンパニー設立なら「合同会社」一択
会社にもいろいろな形態がありますが、プライベートカンパニーを作るなら「合同会社」がおすすめです。
会社というと「株式会社」が一般的かと思いますが、合同会社は株式会社に比べて、
- 設立費用を抑えられる(株式会社:25万円程度、合同会社7万円程度)
- 株主総会が不要(手間がかからない)
- 決算報告義務なし(手間がかからない)
など、オイシイ点が多いです。
知名度では株式会社の方が高いですが、こだわりがなければ合同会社の設立をオススメします。
合同会社は1人でもはじめられるので、株主総会や取締役会も不要、利益の配分も自由なので、個人でやる会社としての自由度は高く、プライベートカンパニーに最適ではないでしょうか。
【年収いくらから?】プライベートカンパニー(法人)を作る基準・タイミング
プライベートカンパニーはどのタイミングで作れば良いのでしょうか。
節税効果が高いというメリットを挙げてきましたが、とても手間やコストがかかるというデメリットもあります。
収入が低いのに、節税のために手間とコストをかけても、逆に損をすることが多いようです。
よって、いきなり最初から法人化するのではなく、個人事業で成果を出し、ある程度の利益が見込めると分かった時点で法人設立を考えるのが良いと思います。
ある程度の売上(1,000万円)になったら法人設立を考える
一般的には、個人ビジネスの「売上(年収)が1,000万円、利益が400万円」を超えた時に設立すると良いと言われています。
ただ、あくまで一般論ですので、ご自身のビジネスの節税効果なども含め、ケースバイケースの判断になります。
設立に当たっては税理士さんに相談してください。(節税を得意とする税理士さんがおすすめ)
※途中で法人を設立して不動産を移転する場合の注意点
不動産投資家が途中で法人を設立した場合、個人として保有していた不動産を法人に移転することもあるかと思います。
その場合、個人から法人への資産の移転は「売却」の形になるので、登録免許税や不動産取得税(固定資産税評価額×3%)などが発生します。
個人で購入した時と二重で支払うことになりますので、この点は注意してください。
基本的には税理士さんに相談しましょう。
【結論】プライベートカンパニー(法人)は作るべき?
プライベートカンパニーについて記載してきましたが、私の出した結論は「自分の事業である程度の利益の見込みが立ってから設立する」です。
不動産投資についてはスモールスタートの段階なので、現時点では「手間やコスト」と「節税」を天秤にかけても、個人事業の方が断然メリットが多いかなと思います。
法人にすると、設立手続きに始まり決算処理や税務など、本業にさける時間も大きく削られます。
不動産投資を始めたばかりであれば、投資活動に集中できるよう、まずは個人事業でやってみるのが良いかと思います。
ある程度の利益を出せるようになり、節税をした方が事業拡大できると判断したときに、プライベートカンパニーの設立を検討してみてはいかがでしょうか。
設立する場合は、設立前の早い段階で税理士さんに相談するのがベターです。
ということで、プライベートカンパニーについて書かせていただきました。
みなさんがよりよい投資ライフとなることを願っております。
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