こんにちは雪駄です。
今回はキャッシュフローの重要性について語りたいと思います。
みなさんは会社の安定性や今後の継続性を知りたいとき、何をみますか?
決算書や有価証券報告書に書いてある「売上」や「利益」を見ますよね。
確かに事業がうまくいっているかを見るのに、売上や利益は重要です。
ただ、それだけでその会社が安定しているかどうか判断できますか?
そもそも、その決算書の数字は信頼できる数字ですか?
決算書の売上や利益は短期的な成績表ですから、その年度の業績の良し悪しは分かりますが、会社の安定性や継続性までは判断が難しいと思います。
決算書に嘘を書いていたら、もちろん社会的にアウトですが、いくらでも操作をすることもできます。
事実、有名企業による粉飾決算などのニュースも後を絶ちませんよね。
では何を見れば良いのでしょうか?
会社の安定性や継続性などの情報を見たい場合は、「キャッシュフロー(現金収支)」を見るようにしましょう。
キャッシュフローとは、直訳すると資金の流れ、すなわち現金収支のことです。
その会社に「現金がいくら入ってきて、いくら出たか」について表しています。
なぜキャッシュフローが大事かといいますと、「現金がないと何もできないから」です。
コロナ禍では、現金の重要性が日に日に増しています。
現金がないと家賃や電気代などの固定費が払えませんし、中小企業などでは、通常の企業活動をするベースとなる資金を安定的に確保することは、最優先の経営課題です。
逆に現金をたくさん保有していれば、新しい投資もできますし、社員に還元することもできます。
現金をたくさん確保できる会社は、安定して企業活動ができるのです。
これは会社経営に限らず、インカムゲイン投資(配当金目当ての投資)についても同様です。
配当を支払うには現金が必要です。
いくら利益が出ていても、手元に現金がなければ配当金を払うことはできません。
よって、配当目当ての銘柄選びは「株価」や「売上の伸長」などで判断するのではなく、「配当金を安定的に払い続けられるために、安定したキャッシュを獲得しているか」で選ぶ必要があります。
このように、キャッシュフローは企業活動を安定して継続するのに大変重要な要素なのです。
利益とキャッシュフロー(現金収支)は異なる
利益とキャッシュフロー(現金収支)の違いがいまいちわからない!
という方もいらっしゃるかと思いますので、ここで解説します。
会社の利益はどうやって計算されるかというと、一般的には「会社の売上から、かかった費用(コスト)を引いたもの」です。
これに対して現金収支は「会社に入ってきたお金(収入)から、出ていったお金(支出)を引いたもの」です。
イメージは家計簿に近いかもしれません。
・利益=売上ー費用
・現金収支=収入ー支出
売上や費用は「会社の帳簿上の数字」ですが、現金収支は「実際の現金の出入りの記録」です。
一見、2つの数字はピッタリ合いそうな気もしますが、何故合わないのでしょうか。
それは認識されるタイミングが違うからです。
売上や費用は「発生主義」といって、現金の収支とは関係なく「取引が発生した時点で」売上や費用を認識するルールとなっています。
この「現金の収支とは関係なく」というところがミソです。
売上を認識するタイミングは、サービスであれば「サービスの提供が完了した時」や、請負であれば「目的物を引き渡した時」などに計上します。(実際はもっと厳密に「実現主義」という基準で計上していますが、ここでは割愛します)
建設業であれば、お客様に完成した建物を引き渡し、お客様が自由に使用できる状態になった時に売上を計上するのです。(受注した時ではありません)
これに対して現金収支は、「実際にお金が入ってきた時、出て行った時」に認識されます。
実際に売上を計上しても、イコール現金が入ってくるとは限りません。
よくあるのが、企業活動では「売上を計上した後に請求書を発行し、お客様からの入金は翌月末(掛売りといいます)」といった商慣習が一般的ではないでしょうか。
売上を計上した瞬間にお金を頂けるケースもありますが、稀なケースだと思います。
このように、掛売りでは「売上と現金の入金」はタイミングは異なるのです。(さらに、お客様からの入金方法が手形であれば、現金化されるのはさらに遅くなります)
※現金払いしかできない駅の売店などであれば、「売上=現金入金」となりますが、クレジットや掛売りなど後払いの仕組みがあれば、タイミングはズレることになります。
費用と現金支出についても同じことが言えます。
以上より、「売上・費用」と「現金収支」で認識するタイミングが異なるので、「利益(売上ー費用)」も現金収支と合わないのです。
・売上や費用は「取引が発生した時点」で認識される(発生主義)
・現金収支は「実際の現金の出入りの時」に認識される
・2つの認識タイミングが違うので、利益と現金収支は合わない
なぜ経営にとって利益よりもキャッシュフローが大事なのか
なぜキャッシュフローを見ることが大事かと言いますと、
キャッシュは
・企業にとっての「血液」であり
・恣意的に操作できない「信頼性の高い数字」である
ことが挙げられます。
詳しくは以下で説明します。
利益が「栄養」だとすると、キャッシュは「血液」だから
よく言われるのが、企業活動にとって利益は「栄養」で、キャッシュは「血液」とも言われています。
いくら栄養を取っても、血液がなければ体中に栄養を送ることができません。
冒頭で書きましたように、現金がないと企業活動が何もできなくなるのです。
でも会社では利益という指標が重宝されますよね。
【入社した時に教えてほしかった!①】会社ってなんのためにあるの?
でも記載しましたが、会社は利益を得ないと、社会の役に立ち続けることはできません。
利益は社会の役に立ちつづけるための「栄養」なのです。
人がご飯を食べないと活動ができないのと同じことです。
ですが、いかに栄養を取っても、それを運ぶ血液がないと意味がないのです。
そこで血液である「現金」が必要なのです。
利益を継続的に上げると同時に、現金を安定的に確保してこそ、いい企業活動につながるのです。
利益は現金を得るための「手段」に過ぎません。
・利益は「栄養」…社会の役に立ち続けるために必要不可欠
・現金は「血液」…栄養を運ぶため、生命維持に必要不可欠
倒産とは「現金が払えなくなること」
現金が血液で生命維持に必要不可欠である理由は、会社の倒産を例に挙げるとわかりやすいと思います。
倒産とは「支払いの義務があるのに、その義務に応じられなくなること(専門用語では債務を弁済することができなくなること)」を言います。
つまり、支払いの義務に応じられない=現金がないから払えない=倒産
ということです。
赤字だから倒産するのではなく、払える現金が尽きたから倒産するのです。
利益が赤字であることも倒産の間接的な原因になりますが、赤字でも現金があれば支払いはできますので、しばらくは企業活動を続けられます。
しかし現金がなくなってしまえば、すぐにでも倒産してしまうのです。
人間も栄養を取らなくてもすぐには死にませんが、血液がなくなったら即死ですよね。
赤字が続けば現金もいずれ底をつくことになりますが、裏を返せば、現金が底をつくまでは企業活動を継続することができます。(借金などをして現金を増やせれば生き延びることは可能)
例えば、コロナ禍で赤字に転落する企業が続出するも、実際に倒産する企業件数は少ないのが実情です。
これは国が緊急措置として無利子で融資をしている(お金を貸している)からで、現金を確保できているからです。
利益は操作できるが、キャッシュ(現金)は操作できない信頼性の高い数字
キャッシュフローを見るべきもう一つの理由は、「キャッシュ(現金)は恣意的に操作することが難しいから」です。
現金収支は、企業や人の思惑によって恣意的に操作することが難しいので、外部から見れば信頼できる数字なのです。
ところが利益は、悪意ある人に恣意的に操作される可能性があります。
先ほど「売上や費用は帳簿上の数字」と説明しましたが、売上や費用を計上するタイミングは、ルールに則っていればある程度企業の判断に委ねられており、裁量の余地があります。
東芝の不正会計事件で発覚したように、「工事進行基準」などは企業の裁量によって簡単に売上を操作できてしまう最たる例です。(もちろん不正な操作は許されません)
詳しくは【東芝の不正会計に見る!】工事進行基準の計算ポイントと不正リスクをわかりやすく解説(Cerulean art ストーリーとアートでみがく会計力さんの記事より。とてもわかりやすく解説されていました)
一方、現金収支は操作が難しいです。
お金が入れば現金が増え、お金を払えば現金が減る、その事実に合わせて帳簿に記載するだけなので、恣意的に操作する余地はほぼありません。
実際のお金の動きと帳簿の金額に不一致があればすぐにわかってしまいます。
そして最終的な現金の帳簿残高は、金庫にある現金や銀行の預金残高証明書などと照合し、一致することが大前提です。
帳簿と現物が1円でも合わなければ、経理担当は必死になって原因を追究します。
このように、現金の出入りを操作することは難しいのです。
だからこそ、現金収支の帳簿の数字は、嘘を書きにくい信頼性が高いものといえます。
・利益…帳簿上の数字なので、恣意的な操作が容易
・現金収支…実際の現金の出入りと一致するので、恣意的な操作が困難
⇨現金収支の方が信頼できる
キャッシュ(現金)が潤沢な会社は社員の幸福度も高い!?
キャッシュが潤沢な会社であれば、新しい投資を思いっきりやることができます。
従業員にも給料アップとして還元することができ、従業員も幸せです。
従業員が幸せになれば、サービスの質も上がります。
このように現金がたくさんあれば、プラスのスパイラルが形成されやすいです。
逆に現金がない会社は、給料カットや家賃を下げるために安い狭いオフィスに移動し、社員のモチベーションは低下、人間関係も悪化、サービスの質が低下してお客さんも離れ、最終的に倒産へ、といった「負のスパイラル」が形成されそうです。。
よって、キャッシュは豊富にあることに越したことはありません。
・新たな投資や従業員への給料アップが積極的にできる
⬇️
・投資やサービスの質向上による売上増
⬇️
・さらに現金が増える
キャッシュフローを見るための「キャッシュフロー計算書」とは
では、キャッシュフローって決算書のどこでわかるのでしょうか。
それは「キャッシュフロー計算書」という現金収支に特化した決算書があります。
キャッシュフロー計算書の概要と見方を紹介!簿記や会計の知識は不要(俺株さんのサイトがわかりやすかったのでリンクします)
手元の現金が豊富になる一番のビジネスモデルは、「お客様からできるだけ早くお金をもらって、買ったものはできるだけ後払いで払うこと」です。(例えば前金受領の手形支払いが最強)
株式投資家もキャッシュフローを見よ
配当金目当てのインカムゲイン投資家であれば、配当金支払の原資となるキャッシュフローを安定して獲得できている銘柄を探しましょう。
特にキャッシュフローの中でも「フリーキャッシュフローが多い企業」が良いと思います。
フリーキャッシュフロー|計算方法は?どう使うべき?(経理コンパスさんのページ)
さらにその会社のビジネスモデルが、安定したキャッシュフローを獲得し続ける仕組みであれば尚良しです。
このように、企業の利益や短期的な株価の上下動はあまり気にする必要なく、「配当を支払うだけのキャッシュを継続的に獲得できるかどうか」が銘柄選びのポイントになります。
ただし、配当を沢山もらうには「株数を増やす」ことがマストなので、株価は低いに越したことはありません。(株価が低い方がたくさん株を買えるから)
長期的に配当狙いの投資を行うには「キャッシュを安定的に獲得できて、かつ株価がずっと低迷している銘柄」がベストであると考えます。
・インカムゲイン投資は「安定したキャッシュフローを獲得できているか」で銘柄を選ぶ
・キャッシュフローの中でも「フリーキャッシュフロー」に注目する
・株数をより多く増やすためには、さらに「株価が低迷している」銘柄を選ぶ
【結論】現金よりもキャッシュフローをみよ!
キャッシュフローの大切さについてお伝えしました。
経営者は「売上売上!」「利益利益!」と言いがちですが、重要な順に言えば「現金>利益>売上」です。
「現金を獲得するための手段」としての利益であり、「利益を獲得するための手段」としての売上なのです。
いかに売上を上げていても利益が伴っていなければ、タダ働きをしたことと同じですし、利益が上がっていても取引先の倒産などで現金が入らなければ、結局利益は損失に変わります。
投資も経営も現金の重要性を忘れずに、良いスパイラルを築いていきましょう!
ではまた。
【本音口コミ】スタディングで簿記2級に「90時間」で合格した建設業経理士の体験談
【目的と手段を分けて考えよう】経理部の生産性向上と働き方改革について
【ブログに応用で収入UP!】ジョブ理論でイノベーションを起こす〜わかりやすく解説〜